めっき動作には「バレルめっき」や「ラックめっき」など複数の方式があります。その中でもラックめっきは、製品をラック治具に固定・吊り下げたままめっき液に浸濡する方法で、
形状が複雑な部品や大型製品にも対応できるのが特徴です。
本記事では、ラックめっきの基本的な仕組みから、使用されるラック治具の種類、設計・保守のポイントまでを解説します。
ラックめっきは、製品を専用の「ラック治具」に取り付け、ラックごとめっき槽に浸けて金属皮膜を形成する方法です。 製品は治具を通して電流を受けるため、電流の流れが安定しやすいです。
バレルめっきが小型部品を多数まとめて処理するのに対し、ラックめっきは製品ごとに個別固定するため、大型製品や外観品質を重視する製品に適しています。
また、通電接点の確保が容易なため、部分めっきや多層めっきなどの精密処理にも向いています。
さらに、ラックめっきは製品ごとに専用のラック治具を設計・製作するケースが多く、製品形状に合わせた最適な固定方法を確保できるのも特徴です。
ただし、ラック内では電流分布に差が生じやすく、バレルめっきに比べて膜厚のバラツキが発生しやすい点がデメリットです。一般的にラックの中央部は膜厚が付きにくく、
角部では厚くなる傾向があります。そのため、電流の遮蔽や補助陽極・補助陰極を用いるなど、電流分布を均一化するための工夫が行われています。
ラック治具は、製品を所定の位置で確実に保持しながら、製品へ電流を供給する役割を持ちます。治具の構造は、通電部分以外にめっきが付着しにくいように設計されており、治具表面には樹脂コーティングや絶縁処理を施して、不要なめっきの付着を防止します。
治具の接点部分は、電流を効率的に流すため導電性の高い金属で構成されます。ICリードフレームや薄型プリント基板(PCB)のように繊細な製品には、上下左右からスプリングで軽く押さえる方式が用いられます。これにより、接触安定性を保ちつつ製品を傷つけない工夫がされています。
ラック治具で製品を固定する際は、製品に孔(穴)があるかどうかによってラッキング方法が異なります。製品に取付孔がある場合は、その孔にフックやピンを通して吊り下げる方式が一般的で、確実な固定と安定した通電が得られます。一方、孔がない製品では、スプリングによって外周部を挟み込む方式が採用されます。
ラックの材質には、ステンレスやチタンなど耐薬品性の高い金属が使用されます。さらに、製品交換や清掃のしやすさを考慮し、分解・組み替えが容易なモジュール設計が採用されるケースもあります。
また、ラックの接点部分にもめっきが付着するため、定期的に剥離処理を行う必要があります。これを怠ると導電性が低下し、めっき品質に影響するため、保守点検が必要です。
ラックめっきでは、製品を固定するための接点部分に治具痕が必ず発生します。治具痕はめっきが付かない部分として残るため、外観や導通に影響する場合があります。製品の用途によっては治具痕を目立ちにくくする工夫や、保持方法そのものを工夫することで、影響をできるだけ抑える設計が行われます。
最も基本的なタイプで、上部から製品を吊り下げて保持します。構造がシンプルで、さまざまな形状の製品に対応可能ですが、めっき液の流れやエア攪拌による動きに注意が必要です。
製品を上下または左右から挟み込むタイプです。落下のリスクが少なく、接触の安定性にも優れます。量産ラインで広く採用されています。
薄い板状製品を固定するために、四辺を枠で押さえるタイプです。製品の反りや振動を抑え、均一なめっき膜厚を確保します。
ラック全体を回転させることで、めっき液の流れを均一化し、膜厚のばらつきを防ぐタイプです。大型製品や形状の複雑な部品に用いられます。
スプリングの代わりにクリップで製品を固定するタイプで、自動開閉機構を備えるものもあります。クランプ・リリースを自動で行えるため、自動めっきラインへの組み込みが容易であり、生産効率が大幅に向上します。
当社では、製品形状や用途に応じたラック治具の設計・製作・販売も行っております。お客様の製品に最適なめっき条件を実現する治具提案が可能です。
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