無電解ニッケルめっきとは?その特徴と種類

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無電解ニッケルめっきとは?

「無電解ニッケルめっき」は、電気を使わず化学反応によって金属表面にニッケルを析出させる表面処理技術です。還元剤の種類によって以下の3種類に分類されます。

  • 無電解Ni-P(次亜リン酸タイプ)
  • 無電解Ni-B(ホウ素化合物還元)
  • 無電解Ni(ヒドラジン還元)
Ni-P浴

このうち、最も工業的に広く使われているのが「無電解Ni-P」です。還元剤として「次亜リン酸ソーダ(NaH₂PO₂)」を用い、めっき膜にはリンが含まれます。

Ni-Bやヒドラジン還元型も用途はありますが、特殊性が強く、Ni-Pは硬度、耐食性、均一性のバランスが良く、設備の運用も比較的容易なため、さまざまな分野で汎用されています。

無電解Ni-Pめっきの用途と強み

無電解Ni-Pはその膜特性から、次のような製品で使用されています。

  • 一般機械部品:カメラ機構部品、時計部品、金型、ピストン、シリンダ、ベアリング、歯車
  • 電子部品:パッケージ、ハンダ付け部、抵抗体、コネクタ、ハードディスク
  • OA・輸送機器:シャフト、ガイド、ローラ
  • その他:医療・宇宙・航空関連部品
Ni-Pめっき例

強みとしてプラスチックやセラミックなどの非導電体にも直接めっき可能な点が特筆されます。これにより、従来の電気めっきでは難しかった複雑な形状や絶縁材部品にも対応できます。

また、めっきそのものの硬度が高く(500~700HV)、耐摩耗用途で硬質クロムめっきの代替としても利用が広がっています。

リン含有量による特性の違い

無電解Ni-Pは、めっき中のリン含有量によって物性が大きく変わります。以下に分類とその特性をまとめます。


分類 含有量 密度 硬度(HV) 耐食性 磁性 構造
低リン 1~4% 8.5 g/cm³ 650~700 強磁性 結晶質
中リン 7~9% 8.1 g/cm³ 550~600 微磁性 中間
高リン 10~12% 7.9 g/cm³ 500~550 非磁性 非晶質

一般的には中リンが多く使用されます。設計時は硬度や磁性を意識しながら、用途に応じて適切なリン量を選定することが求められます。

無電解Ni-Pめっきのしくみ

無電解Ni-Pめっきは、化学還元によってニッケルとリンの合金を金属表面に析出させる方法であり、電流を必要としない「自触媒反応」によって行われます。

反応には「硫酸ニッケル」などのニッケル塩と、「次亜リン酸ナトリウム(NaH₂PO₂)」が使用されます。めっき浴中では、次亜リン酸がニッケルイオンを還元してNi-P合金を生成し、同時に還元剤そのものはリンとして析出されます。

重要ポイント

  • 膜特性とプロセスの安定性が高いことから工業用途で最も使用されているのはNi-P型
  • 高リンタイプは非磁性であるため、HDDやセンサなど磁気干渉が懸念される部品に最適
  • 硬度と耐摩耗性に優れるため、摺動部やブレーキ部品などへの応用に強みがある
  • 絶縁体への直接めっきが可能で、プラスチックやセラミックへの表面処理に対応できる
  • リン含有量により性質が変わるため、材料選定時に設計条件と照らし合わせた検討が必要

お問合せ

[株式会社 友電舎]
〒554-0052 大阪府大阪市此花区常吉2丁目4-8
TEL:06-6465-1663 FAX:06-6468-5600

Mail:toiawase@ydn.co.jp

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