「無電解ニッケルめっき」は、電気を使わず化学反応によって金属表面にニッケルを析出させる表面処理技術です。還元剤の種類によって以下の3種類に分類されます。
このうち、最も工業的に広く使われているのが「無電解Ni-P」です。還元剤として「次亜リン酸ソーダ(NaH₂PO₂)」を用い、めっき膜にはリンが含まれます。
Ni-Bやヒドラジン還元型も用途はありますが、特殊性が強く、Ni-Pは硬度、耐食性、均一性のバランスが良く、設備の運用も比較的容易なため、さまざまな分野で汎用されています。
無電解Ni-Pはその膜特性から、次のような製品で使用されています。
強みとしてプラスチックやセラミックなどの非導電体にも直接めっき可能な点が特筆されます。これにより、従来の電気めっきでは難しかった複雑な形状や絶縁材部品にも対応できます。
また、めっきそのものの硬度が高く(500~700HV)、耐摩耗用途で硬質クロムめっきの代替としても利用が広がっています。
無電解Ni-Pは、めっき中のリン含有量によって物性が大きく変わります。以下に分類とその特性をまとめます。
分類 | 含有量 | 密度 | 硬度(HV) | 耐食性 | 磁性 | 構造 |
---|---|---|---|---|---|---|
低リン | 1~4% | 8.5 g/cm³ | 650~700 | △ | 強磁性 | 結晶質 |
中リン | 7~9% | 8.1 g/cm³ | 550~600 | ○ | 微磁性 | 中間 |
高リン | 10~12% | 7.9 g/cm³ | 500~550 | ◎ | 非磁性 | 非晶質 |
一般的には中リンが多く使用されます。設計時は硬度や磁性を意識しながら、用途に応じて適切なリン量を選定することが求められます。
無電解Ni-Pめっきは、化学還元によってニッケルとリンの合金を金属表面に析出させる方法であり、電流を必要としない「自触媒反応」によって行われます。
反応には「硫酸ニッケル」などのニッケル塩と、「次亜リン酸ナトリウム(NaH₂PO₂)」が使用されます。めっき浴中では、次亜リン酸がニッケルイオンを還元してNi-P合金を生成し、同時に還元剤そのものはリンとして析出されます。
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